昨年からのコロナ禍で業界によってはで大変なことになっていますが、ここ数年でみると、企業の急な業績悪化、突然のM&A、さらには企業業績好調のなかでの希望退職の募集などが目立っていますね。
大手企業でも、業界最大手であっても、これから絶対に安泰という保証はないと考えた方が良いようです。今後考えられる大きな環境変化によるダウンサイドリスクに対して、自分のこれまでのポジションと収入を確保していくためリスクヘッジをどのように備えれば良いのでしょう。突然訪れる事態にどうすれば対処できるのでしょうか?
すぐに思いつくのが普段から市場価値の高い資格や専門性を身につけるということでしょう。いざという時に転職先も見つけやすいからです。かと言って、サラリーマンが弁護士やMBAのような実力の証となるような資格を、今から取得しようというのではありません。
普段から「会社に依存し過ぎない生き方」を考えておくことが大切だと思います。いざとなった時に、必要最低限の収入を確保できる資格やスキルや手段を、安定している生活の中で、身につけておくということが大切であると思います。
その意味で一度自分のたな卸しを行うことをお勧めします。サラリーマンには、これまでの貴重なビジネス経験があります。実績や成功例のあるスキルやノウハウは、ときに資格以上の効力を持つ場合があるからです。例えば、人事部マネージャーとして新規採用者数を独自の工夫で倍増させたとか、新規事業開発でのプロジェクトマネージャーに携わり数年で黒字化させた経験とノウハウを持っている等、転職時にアピールする実績や成果があれば断然有利になるでしょう。
その時に注意することもあります。それは人材に関わる各種能力やスキルというのは、その時代によって高く評価される時もあれば、そうでもない時代もあるということです。ドル/円の為替の変動相場とある意味同じです。
将来に対する大きなダウンサイドリスクをヘッジするには、そして誰でも可能であることは、普段から自分に対して戦略的自己投資を行っていくことであると思います。つまり、自分のビジネス経験や知識をレベルアップさせるような知識強化や経験増加につながることに投資をして、さらに「強み」を磨くということです。ここは「強み」であって「弱み」ではありません。
今から自分の「弱み」を挽回しようと考えない方が得策だと思います。いくら時間とお金があっても、元々弱いことは非効率です。それよりも今持っている「強み」をいかに際立たせるか、他者と差別化させるかを優先して考えるほうがずっとやりやすいですし効率的です。その場合、現在の「強み」に何か他の知識を掛け合わせていくことを考えると良いと思います。
例えば、技術系専門知識×英語とか、×コーチングスキルとか、×新商品開発ノウハウとか、現在の専門知識や専門能力に、他分野の知識やスキルを身につけ掛け合わせることで、人材市場においても目立つ存在、通用する存在になっていくことができます。サラリーマンで安定した生活を確保できているうちに、それを実現するための戦略的自己投資を行っていくのです。
もう一つの方法としては、「自分で稼げる能力」を身につけておくことも大変重要になってきます。その意味では、既に厚生労働省の就業規則段階では副業解禁となっていることを最大限に利用するべきだと思います。まだまだ企業によっては副業が認められていない場合もあるのが現実ですが、遅かれ早かれ時代の趨勢が後押しをしていくでしょう。それでも数年前から比べれば副業サイトが出現するなど、かつては考えられなかったようなサラリーマンに有利な千載一遇の環境になっています。
と言っても、これまでのビジネス経験を基に独立しようかとすぐに考えてしまうのは早計です。例えばコンサルタントとして活動するには、少なくとも3年間は準備期間(拙著「普通のサラリーマンでもできる!週末コンサルの教科書、PHP研究所を参考方)と自己投資期間を設けて周到に準備した上で意思決定をすべきです。
「やりたい」ことと「やれる」ことには、通常かなりの乖離があるものです。特に独立志向の高い傾向にあるプロモータータイプの方では夢中になると自分が見えなくなってしまうものです。ここは冷静になって自己分析をすべきです。ちなみに、ベンチャーキャピタルが投資すべき企業かどうかをチェックする視点は4つあるといわれています。それは、「マーケット将来性」、「強み度」、「経験スキル度」、「収益性」です。この視点を自分に応用して自己分析されると良いと思います。
転職志向でいくのか、副業志向でいくのか、それともこのままでいくのか、選択肢はいろいろありますね。今、「自分は会社で必要とされているし頑張れば定年まで居られるだろう」と思いましたか?
もしかすると、現状維持バイアスに陥っているかもしれません。私たちは何か決断をしようとする時、新しいことを始めようと思った時、無意識のうちに変化を拒む気持ちが働くことがあります。大きい決断になるほど現状維持バイアスがかかりやすいのです。毎日仕事で追われる日々を過ごされている中ではなかなか時間も取りにくいとは思いますが、一時、考えてみる時間を作ってみてもいいかもしれません。
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